注文住宅において図面で注意すべきポイント
ここでは、図面にまつわる事柄をまとめました。そもそも図面は注文住宅においてどのような役割を担うのか、また図面の種類や重要性などを解説しています。
図面
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建売住宅とは異なり、注文住宅においては事前に実物を確認することができません。よって完成後の家を知るためには、詳細なイメージ図、つまり図面を確認するより他に方法がありません。ここでは、注文住宅における図面の役割や種類、図面に関わるトラブル事例などについて解説しています。
住宅における図面の役割
注文住宅における図面の役割には、主に次の3つがあります。
- 施主と業者との認識共有
- 図面とは、言わば、まだ見ぬ家の詳細なイメージ図。施主の認識と業者の認識との間に食い違いがあれば、その食い違いは必ず図面に表れています。相互の認識にズレがないかを確認する上で、図面は唯一無二の重要なツールです。
- 建築現場に対する具体的な指示
- 建築現場の職人の仕事は、図面を忠実に再現することです。見方を変えれば、図面は職人たちへの具体的な指示書になる、ということです。
- 「建築確認」の申請書類
- 家を新築する場合には、行政から着工前に「建築確認」を受けなければなりません。図面は、「建築確認」の申請をする際に必要な提出書類の一つとなります。
必要な図面の種類
注文住宅の契約時や建築実施時に必要となる図面や資料の種類について、一覧にまとめました。ただし、以下の図面・資料がすべてが、必ず作成されるというものではありません。住宅メーカーや工務店、設計事務所などの請負会社の違いによって、作成されることもあれば、作成されないこともあります。特に重要な図面については、図面名称の前に●を付しました。
図面名称 | 用途 |
---|---|
●敷地調査報告書 | 注文住宅をプランニングする前に、土地の状況や条件などを調査・記載した資料。 |
●特記仕様書 | 施工上の注意点、建物に使用される材料の仕様やグレードなどを言葉で記載した図面。 |
●設計概要書 | 所在地や敷地面積、工法、階数、延床面積など、住宅の概要を言葉で記載した図面。 |
●仕上表 | 住宅内部や外部に使用される仕上げ材の名称や品番などを言葉で記載した図面。 |
配置図 | 敷地に対する住宅の配置を記載した図面。1階平面図と兼用されることもあり。 |
平面図 | 床から1.2m程度を水平に切断したと仮定して、床面向きで作成される図面。 |
屋根伏図 | 住宅を上空から俯瞰した場合の、屋根の形状を表した図面。 |
立面図 | 東西南北、それぞれ4つの方向から住宅を見た場合の姿図。 |
断面図 | 地面に対し、住宅を垂直に切断したと仮定して作成される姿図。 |
●矩計図 | 断面図の詳細版。基礎から軒先までの寸法や納まりを詳しく記載した図面。 |
●平面詳細図 | 平面図の詳細版。構造材や縦部、住設機器などの寸法や納まりなどを詳しく記載した図面。 |
展開図 | 部屋の中心部から壁側を眺めた場合の姿図。 |
天井伏図 | 床から1.2m程度を水平に切断したと仮定して、天井向きで作成される図面。 |
建具リスト | 屋内外に使用した建具の形状やサイズ、仕様などを記載した図面。 |
階段詳細図 | 階段の寸法、納まり、形状、仕様などを詳しく記載した図面。 |
●部分詳細図 | 矩計図や平面詳細図では記載しきれない部分の納まりを詳細に記載した図面。 |
家具図 | 造り付けの家具(収納ボックス、カウンターなど)の形状やサイズ、仕様などが記載された図面。 |
●地盤調査報告書 | 地盤の強度調査の結果を、建築主に報告するための資料。 |
●基礎伏図 | 住宅の基礎部分を平面的に記載した図面。 |
●1階床伏図(土台伏図) | 1階部分の土台、床組み、柱を平面的に記載した図面。 |
●各階床伏図(梁伏図) | 各階の床の骨組みを平面的に記載した図面。金物位置図と兼用される場合があり。 |
●小屋伏図 | 小屋梁や小屋束、母屋などを平面的に記載した図面。金物位置図と兼用される場合があり。 |
●軸組図 | 柱や梁、小屋などの骨組み、金物の配置等を立体的に記載した図面。 |
●基礎詳細図 | 基礎部分の断面の形状を記載した詳細な図面。 |
●構造基準図 | 構造図(上記「地盤調査報告書」から下記「構造計算書まで」)では表現ができない納まり、注意点などを詳細に記載した図面。 |
●金物位置図 | 構造材の接合や補強に使用される金物の位置や種類などを記載した図面。 |
●金物リスト | 構造材の接合や補強に使用される金物の形状、耐力などをリスト化した資料。 |
●壁量計算書 | 床面積や外壁面積における必要壁用を計算した資料。 |
●構造計算書 | 建物の構造計算の概要や計算式、計算結果などをまとめた資料。3階建ての場合は必須。 |
外部給排水設備図 | 建物の外部における、雨水や汚水などの排水ルートが記載された図面。 |
設備位置図 | スイッチ、コンセント、給水、給湯、ガスコックなどの位置が記載された図面。 |
照明器具リスト | 照明器具の仕様や姿図などが記載された図面。 |
電気配線図 | 住宅内の電気設備の配線状況が記載された図面。 |
給排水設備配管図 | 住宅内の給水・排水ルートが記載された図面。 |
ガス配管図 | ガスの配管状況が記載された図面。 |
住設機器図 | ユニットバスやシステムキッチンなど、住宅の設備機器の形状や仕様、サイズなどが記載された図面。 |
外構図 | 塀や門、植栽など、住宅の外部工事に関する内容が記載された図面。 |
設計図・仕様書・内訳書は厳重にチェックを
注文住宅の契約をめぐっては、必ず「設計図」「仕様書」「内訳書」の3点を詳細に確認しておきましょう。これらの確認や理解を怠ると、後々、思わぬトラブルに発展するケースがあります。
- 設計図
- 建物の構造や間取り、外観、寸法、形状、設備などを詳細に記載した図面です。上記で説明した図面のうち、重要なものについては、詳細にチェックをしておきましょう。寸法の見方などが分からない場合には、設計士に逐一質問をして、理解に漏れのないようにしてください。
- 仕様書
- 使用する材料のメーカーや品質、性能、施工方法などの詳細な仕様が記載された資料です。設計図に書き込めないような仕様については、仕様書に具体的に記載されているので、かならずチェックしておきましょう。
- 内訳書
- 各工事の数量や単価を示したものが内訳書です。注文住宅の場合、建築中に予算の都合等で工事内容を変更することもあります。仮に工事内容を減らしたとしれば、それに応じた減額がなされなければなりませんが、内訳書が具体的でない場合(「建具工事一式●●円」など)、適正な減額計算ができません。20万円の減額が必要なところを、悪徳な業者は5万円の減額で調整するかも知れません。トラブルを避けるためにも、内訳書の内容が具体的かどうか、かならずチェックが必要です。
上記3点のうち、とりわけ設計図と仕様書は、施主と業者との認識の相違を防止するための重要な資料になります。よって、通常は工事請負契約書に両書類ともに添付されているものです。しかしながら、一部の業者の中には、簡易的な設計図・仕様書のみしか添付していない例も見られるので要注意。「設計図や仕様書には記載されていないが、口頭の打ち合わせで伝えてあるから大丈夫だろう」と考えていると、次に紹介するようなトラブルを経験することになるかも知れません。
トラブルや失敗事例から学ぶ図面や間取りで注意すべき点
設計図や仕様書、内訳書などのチェックが甘いと、実際に家が出来上がってから思わぬトラブルに遭遇することがあります。トラブル事例を3点ほど確認し、図面の重要性を再認識しておきましょう。
- 事例1:「後からいくらでも変更できる」には要注意
- 建築業者とプランの打ち合わせに入ったところ、「まずは契約を結んでください。細かい仕様は後からいくらでも変更できる」と言われ、契約書にサインをしたAさん。その後の打ち合わせで、契約前に提示されたイメージ図に近い色柄の内装材を選んだところ、「こちらの内装材はプラミアムタイプなので追加料金がかかる」と言われました。Aさんは「契約前のイメージ図に近い」ということを主張しましたが、業者は「イメージ図は、あくまでもイメージです」と言って取り合ってくれず、結局、追加料金を支払う羽目になりました。
- 事例2:イメージ図だけを鵜呑みにしない
- ダイニングルームにシーリングライトの設置を希望していたBさん。実際に家が完成してみると、シーリングライトはテーブルとは離れた場所に設置してありました。Bさんは、契約前のイメージ図にはテーブル上にシーリングライトが描かれていたため、てっきりイメージ図通りの位置に照明を設置してもらえるものと思っていたとのこと。Bさんは業者に苦情を申し立てたところ「設計図には照明の位置が記載されていません。部屋の中心部に照明を設置したので、施工に問題はありません」と一蹴されました。
- 事例3:設計図の寸法もチェックする
- 自動車を2台納められる車庫を希望していたCさん。業者にその旨を伝え「車庫の面積を広めにとって欲しい」と伝えました。実際に家が完成し自動車を入れようとしたところ、幅が狭すぎて2台目が納まらず。業者にクレームをつけたところ「車庫の寸法通りに仕上げたので、契約違反ではない」と言われました。
上記のようなトラブル事例においては、必ずしも業者が悪いとは言い切れません。施主側としては不満だと思いますが、むしろ業者の言い分のほうに一理あるとも言えます。一生に何度も建てるわけではない注文住宅。後悔のない家づくりを実現するよう、完全に業者任せにせず、施主側においても最低限できるチェックを怠らないようにしましょう。